歯科インプラントとは、人工歯根のことであり、歯が無くなってしまった部分の歯茎に新しく、第二の永久歯ともいえる人工の歯を植え、国定式の入れ歯(ブリッジ、冠)をいれ、もとの自分の歯と同じように食べ物を咬めるようにする治療方法です。わずらわしい取り外しの入れ歯から開放され、自分の歯が戻ってきたような状態を回復します
インプラント(人工歯根)の歴史は古く7世紀頃のホンデュラスの遺跡の顎骨に2枚貝が植立されてたり、ペルーにおいてインカ時代のミイラの顎骨に緑色の石(エメラルド?)が植立されており実際に機能していた痕跡を認められました。その後も色々と試みられたようですが、ほとんど日の目を見ない状況が続きました。
近代歯科の歴史の中では1913年Greenfieldが22Kゲージ型インプラントを開発、その後色々な析料や形態のものが出てきて、研究機関での実験が多く行なわれるようになりました。
一般臨床医による臨床応用がなされるようになったのは1970年代になってからで、日本では1980年代になってから一部の開業業医でも盛んに使用され始めました。 当時は雨後の筍の様に色々な材料や方法が考えられ、一部の先生方は積極的に取組まれたようです。 メーカーによりその材料や形態は種々で、私達もどの方法が一番良いのか迷ってしまうほどでした。
図1(インプラントの模式図)
右側は天然歯の状態、左側はインプラントと土台そして冠を被せた状態を示します。
インプラント材料としては、金属(コバルトクロム・チタン)またはセラミックが使われ、形態としては 板状のものや棒状のものとさまざまです。この10数年間(1980~1990年代)でインプラントに対する歯科医の評価もわかれ、推推進派と否費派で多くの論争を巻き起こしました。
というのも、予後良好でない種類のインプラントなどもあり撤去せざるを得なかったり、医療訴訟で裁判沙汰になったりしたものも結構あったようです。
一方、良好な結果を得て、より改善されたものも出てきました。このように明暗を分けた10数年間でした。 そして現在では成績の良くないインプラントは自然淘汰され、予知性の高いインプラントが多く使用されるようになりました。
今日ではインプラント治療は歯科医師および患者さん双方から歯科において非常に有効な治療法であり、予後の成績も良好であるという高い評価を得るようになりました。
インプラントの種類と構造
インプラントの種類も各メーカーにより様々でが、現在ほぼ似たような形態になってきました。
現在主流になっているインプラントはチタンで出来ており、形態は円錐形でネジ状、表面がごく僅かに凸凹した粗面になっています。
当医院では、世界的にも多く使われ、長期の治療成績も良好なストローマンインプラントとカムログインプラントを使用しております。
歯科インプラントは人の歯でいえば根の部分のことであり、歯根だけでは歯として機能しません。 ですから、インプラントには歯を被せる為の土台が必要になります。
この土台の事をアバットメントと言います。この土台(アバットメント)の型をとり、冠を作り、セメントでアバットメントに冠をつけて人工の歯が出来上がります。
もう一つの方法は、ネジで冠をインプラントと接合するものもあります。これは前歯部など審美性が要求される部位に良く用いられます。

プラットフォームスイッチングインプラント
このインプラントは前歯のインプラント治療をより審美的に修復するために有効なものです。
前歯の治療でも1本歯が無いような場合は比較的自然な感じに修復できますが、2本以上歯が無いようなケースでは自分の歯と同じような自然な歯茎のラインを再現することは極めて難しいことです。何故ならば、インプラントを植立し傷が治った後、土台を接合し冠を被せるのですが、この接合部分の周囲の骨が高さ幅共に1.5mmほど吸収されてしまうので歯と歯の間の歯肉が退縮して自然な歯茎のラインを再現することが難しかったのです。(図1)

従来型インプラント プラットフォームスイッチングインプラント
しかし、最近インプラントの形状や構成が進歩し、この接合部の骨の吸収を抑えることが出来るようになり、これらの症例でもある程度自然な感じに修復することが可能になってきました。
各メーカーとも近年このタイプのインプラントを発売し、私もこの3〜4年ほど前歯部にはこのインプラントを使用しておりますが、ある程度の手ごたえを感じております。(図2)

ただし、インプラント治療をする前の状態がかなり難しい症例が多いので、相変わらす骨造成や歯肉移植などと組み合わせての処置となることがやはり多いのも事実です。
それでは実際の症例をお見せしましょう。
(図3)写真は術前のもので右上2本の歯が揺れてきて保存不可能で抜歯しました。

(図4)写真はインプラントを2本植立しそれを土台としたセラミック冠にしました。

術前の状態より調和の取れた歯肉のラインが確認できます。
インプラントのメリット・デメリット
インプラント治療に適さない方 インプラント治療を望まれてもまれに、治療が無理な人や状況があります。 全身状態が思わしくなかったり病気の種類によっても治療が無理なものもあります。
■禁忌症
リュウマチ性関節炎、骨形成不全症、骨軟化症、免疫不全症(自己免疫疾患) 心理的精神的疾患、重度糖尿病、出血性疾患、重度の喫煙、若年者(約18歳未満)
このような疾患をもった患者さんや状態の人はインプラント治療を避けたほうがよいとされてます。
ただし、糖尿病患者もコントロールされ、軽度のものならば問題ありません。
喫煙に関してはインプラントの予後があまり良くないとのデーターがあり、そのへんの説明を患者さんにして禁煙や節煙を心がけてもらってますが、やはりヘビースモーカーの人の予後は良くないのが実感です。
■一時的な禁忌症
治療されていない歯周炎、インプラント植立部に感染がある、インプラント植立部の骨幅や高さが不足している。
上記に挙げたものはその状況が改善されればインプラント治療が可能になります。
以上大まかにインプラント禁忌症を挙げてみましたが、それぞれの患者さんの病状の程度によりインプラント治療が可能なものもありますのでそのへんは主治医と相談されてください。
入歯、ブリッジとの違い
ブリッジと入れ歯について
歯を1・2本失うと通常は手前と奥の残った歯を土台にしてブリッジという修復物になります。
これはセメントでブリッジを装着するのでそれほど違和感はありませんが土台の歯に無理な力が加わったり、土台が虫歯になったり根が破折したりして何年かするとやがて抜歯となります。

このように連続した部位の歯が数本抜けてくると今度は取り外しの入れ歯ということになります。
通常は残った歯にバネを掛けて入れ歯を支えるタイプのものが一般的です。
このほかにもコーヌス冠やアタッチメント(連結装置)を支える歯と、入れ歯に組み込んだものなどもあります。しかし、入れ歯の異物感に耐えられなかったり、入れ歯を支える歯に無理な力がかかったりしてその歯を痛め最終的には抜歯になるケースが多いのも事実です。
そしてやがては総入れ歯となってしまいます。
HOME