歯根破折の増加と対処法
著者 中島和敏
8020運動の成果もあると思いますが、残存歯数の増加は喜ばしい結果です。しかし、新たな問題として歯があるからこそ起こるトラブル:根面う蝕や歯根破折が近年増加してきました。
2018年 11月の公益財団法人8020推進財団による永久歯の抜歯原因調査での結果において抜歯の主原因別の割合で最も多かったのは歯周病(37.1%)、次いでう蝕(29.2%)、破折 (17.8%)、その他(7.6%)、埋伏歯(5.0%)、矯正(1.9%)の順となりました。
歯根破折による抜歯が3番目という結果は日常臨床に携わる者のとしてやはりかと感じでした。
神経を抜いて10年20年と経つと枯れ木のように歯も脆くなってくる事、さらに弾力性の少ない金属の土台が付いていると、より歯根破折しやすくなるとのデータもあります。
予防法:
- 土台に金属を使用せず、ガラス繊維を束ねたファイバーポストとレジン(合成樹脂)を使用した土台すること。
- 力の負担を軽減するようなかぶせ物にするなどの対策で歯根破折を多少とも軽減することができると思います。
- 上記に関連しますが、噛む力の強い人や歯ぎしりなどの習癖のある人などは歯が無い部分の治療法としてブリッジは避け、残った歯に負担をさせないよう可能な人はその部分にインプラントを埋入し冠をかぶせる事を勧めます。
症状:長期間無症状だった歯が,ある時急に症状が出てくるように感じる。「前の治療は覚えていないくらい昔」,「ずっと何もなかったのに」,「最近急に嚙むと痛くなった」は,垂直性歯根破折が疑われます。
いずれにしても確定診断は難しいですが、多くは治療用顕微鏡でその歯にひびが入っているかを確認することができます。
治療法:もし歯根破折が確認されたら、残念ながらその歯は抜歯になります。他の治療法として接着治療がありますが、結局抜歯に至るケースが多いのが実態です。
抜歯後はいろいろな条件をクリアできればインプラント治療が現状では良い治療法といえます。
抜歯の主原因別割合
