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インプラントの歯周病

 
 
著者 中島和敏
 

近年は歯科インプラントも大分普及してきました。しかし、その反面インプラントの歯周病も増加してきている現状を認識する必要があります。
 
歯を失う原因のトップは歯周病です。つまり歯を失った方の多くは歯周病の既往歴があると言うことです。
 
そして、インプラントの歯周病になるリスクとしてあげられているのが歯周病の既往歴のある患者さんであると、多くの研究で確認されています。
 
インプラント粘膜炎とインプラント周囲炎の違いは下記のように定義されています。

  • インプラント粘膜炎とはインプラント周囲の粘膜に限局した炎症
  • インプラント周囲炎とはインプラント周囲の粘膜の炎症と進行性の骨吸収を認める。

 

症例
 
 

いずれにしても、天然歯と同じように歯ブラシ等の清掃が不十分でプラークの取り残しと蓄積によりインプラント周囲にも炎症が発生し引き起こされます。
 
また、間接的には患者さんのおかれた状況によってもこれらの病気を悪化させます。
 
具体的には管理されていない糖尿病や喫煙習慣などがこれらの病気を悪化させるとの研究が多くあります。
 
さらに、歯周炎の既往歴があると既往歴のない患者さんと比べてインプラント周囲炎になるリスクが格段に高くなるとの報告もあり、一層の口腔衛生管理が必要となります。
 
現在いくつかのインプラント周囲炎についての研究がありますが、インプラント周囲炎の患者の推定有病率は22%でかなり多くなっています。インプラント治療を受けた患者さんの10人に2人はインプラント周囲炎にかかっているということです。
 
インプラント治療を受けた患者さんは、これで良く咬めるようになり一安心していると思いますが、これからが肝心で口腔ケアーを十分にしていく必要があります。
 
特に歯周病の既往がある患者さんは下記のことを十分心に留め置いてください。
 

  1. インプラント治療を行う前に歯周病の治療を完了しておく。
  2. 日頃のプラークコントロールを十分に意識して行う。
  3. 歯科医院での定期検診を必ず受け、歯周病の検査で現状の把握と磨き残し部位の確認を行い、磨き方のアドバイスを受け実行する。また、歯科衛生士による専門的なクリーニングを受ける。
  4. 糖尿病等の全身疾患のある患者さんは良い状態を保つよう管理する。
  5. 喫煙習慣のある患者さんはできるかぎり禁煙するか、どうしてもそれができなければ節煙に努める。

 
インプラント治療は全く自分の歯が戻ってきたというところまで改善できるものではありませんが、確かに失った歯の代わりとして咀嚼能力と審美性もある程度改善させることが可能になってきました。
 
しかし、上記で述べてきたように口腔機能がある程度改善された状態がゴールではありません。いかにこの状態を長く保たせられるかは、その後の患者さんの十分な手入れと、良好な生活環境を保つこと、そして定期検診をしっかり受け専門家によるクリーニングを受けることがお口の健康を保つのに必要です。